そもそも財政って何?

 財政という言葉は、日本社会におおきくかかわっていますよね。大学の教科書には「公共の経済」あるいは「貨幣による統治」と説明されています。でもこれだけでは財政が何を意味しているのか分かりませんよね。そこで、公共、経済、貨幣、統治、それぞれの言葉の中身を考えながら、財政が誕生した背景を探ってみましょう。

財政の誕生を歴史的に見る

 人間の長い歴史を振り返るとわかるように、人間は、生きるため、そして生活するためにお互いに助け合いながら生きてきました。みんなにとって必要なものを、みんなで作り、たくわえ、公正に分ける。この目的のために人間は共同で生活する場を整え、集団を形成してきました。これをコミュニティといいます。

 みなさんは「経済」というとすぐに「お金儲け」を思い浮かべると思います。しかし「経済」は「オイコノミア」という言葉から始まっています。もともとは「家の財産をどのように管理するか」ということが経済の意味だったのです。家と家がつながるとコミュニティができます。その中での、経済、つまりみんなの財産を管理するための方法として、人間は次の二つのことを大事にしてきました。

 ひとつは、みんなにとって必要な物を互いに助け合って提供し合うことです。これを「互酬」といいます。もう一つは、メンバーが命の危機にさらされ、コミュニティの共同作業を難しくしないよう、困っている人にみんなの財を分け与えることです。これを「再分配」といいます。

 コミュニティが自給自足することで成り立ち、みんなが力を合わせて活動していた時は、「経済」とはお金儲けよりも互酬と再分配のことを指していました。しかし、16世紀以降、新たに発見されたアメリカ大陸から多くの金銀がヨーロッパに流れ込み、みんなが使う共通のお金、すなわち貨幣が急速にコミュニティに広がっていきました。18世紀のおわりに産業革命が起きると、商品が大量に生み出され、その売買がコミュニティ全体を巻き込んでいきます。人々は生存や生活を共にしてきた土地を離れ、貨幣を稼ぐために労働者として仕事のある年に移動していくようになりました。ここには問題がありました。仕事を失ったとき、コミュニティを離れた人々は家さえ持てない貧民となってしまいます。都市の治安は悪化し、時には伝染病までが蔓延し、荒廃してきました。そこで働く人の生活を改善し、社会を安定させるために人間の生存や生活の必要をコミュニティの代わりに提供する仕組みが求められるようになっていきました。もう一つ、16,17世紀に打ち続いた戦争によって、人々はしばしば生命の危機にさらされました。戦乱の時代が生み出したのは常備軍ですが、大規模な軍隊をいつも整えておくという必要が軍事費を飛躍的に増大させました。

 こうしてみんなが生きていくために必要なものを提供する政府、その中身を話し合う議会、そのためにみんなが貨幣を治める仕組みである税がそれぞれ発展しました。これが「財政」の誕生です。経済の中でも生存や生活と結びつく互酬や再分配の領域を社会の全員で満たしていくからこそ、「公共」の「経済」と呼ぶわけです。

また、それはコミュニティの協力関係とは違い、人々が働いて手に入れる貨幣を税金として納めることで可能となります。ですから、貨幣を通じて人間の命を守り、社会を安定させること、つまり、「貨幣による統治」が財政のもう一つの特徴とされるのです。

財政は社会を見定めるための手段

 財政の原理をわかっていただけたでしょうか。大切なのは、だれかある個人の利益のために財政があるのではない、ということです。社会のメンバー全員が必要とするもの、つまり人間ならば誰もが必要とするものを提供するために財政は存在するということです。この点をもう少し具体的に見てみましょう。

 日本の財政の中で一番ウェイトが大きいのが社会保障費です。社会保障は年金や医療、介護などからなります。人間であれば、誰でも年を取って働けなくなったりする可能性があります。あるいは病気にかからない人間も一人もいませんよね。だから年金や介護医療は「みんなの必要」です。学校や道路、水道も同じです。人間である以上、生きていくために、生活していくために、だれもが必要とするものです。

 これらがまとまって財政は形作られます。そして、みんなが必要とするものだからこそ、それに必要なお金をみんなが税金として負担し合うわけです。ここで重要な点があります。財政はその社会を支える人々の年齢や収入の状態を映し出します。例えばお年寄りの多い社会、高齢化の進んだ社会であれば、その人たちの必要とする年金や介護、医療などの占める割合は大きくなるでしょう。戦争によって多くの建物や設備が破壊された経済であれば、道路や公共施設を作るための公共事業の割合がどうしても大きくならざるを得ません。みんなが何を必要と感じるか、どんなものに価値があると考えるかは、その時代時代で異なります。また、どのような政治の仕組みを作るか、政治家がきちんと国民の声に耳を傾けるかによって、必要とされるものがうまく政府に伝わったり、伝わらなかったりします。財政は、社会や経済、政治の姿を映し出す鏡のようなものなのです。

 もう一点、大事なことがあります。お金持ちであれば自分で貯金することで、自分の生存・生活の必要を満たすことができます。十分な貯金があれば年金は必要ありません。民間の保険会社に入って、将来に備えることも私立の学校に子供を通わせることもできます。お金を十分に稼げる人はいいでしょう。でも、一度仕事を失ってしまうと、その人は大変な不安に包まれて生きていくこととなります。いや、それ以前に学校や病院、老人ホームなどを利用できないという不安におびえ、人間らしく生きていくことさえかなわない貧しい人たちをほおっておいてよいのかという問題もあります。みんなが必要とする者のために税金を負担し合う社会とは、だれかが困ったときのためにお金を出し合う社会、困った人を救済する社会、言い換えると、一人一人が喜びと痛みを分け合う社会です。この意味でも、財政はその国の人々の意識やものの考え方を映し出すといえます。

まとめ

 財政がどれほど大切かお判りいただけましたか?財政は、その国の社会を見極めるために必要不可欠なものなのです。自分の国を見定めるためにも興味を持ってみてくださいね。

harukata

「大学では何をするんだろう?」「実際の授業はどんなの?」と思っている方のために大学の授業内容や、現役大学生に向けて、知っておくべき社会の問題などを主に紹介しています!将来に少しでも不安を感じている方の力になれれば幸いです。

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