人口問題の成功例を紹介!

世界には190余りの国家がありますが、世界銀行はこれを一人当たりGNP(国民総生産)によって「低所得国」「中所得国」「高所得国」に分けています。高所得国というのが先進国にあたります。一般的に一人当たりGNPが大きくなるほど出生率が下がる傾向があります。

スリランカ

 スリランカでは1960年から1985年までに出生率が40%近く低下し、80年代前半に年間人口増加率が1.4%に下がっています。その背景にあるのが政府の社会福祉政策です。第二次世界大戦後のスリランカは無料食糧、配給食糧、価格補助によって基本食糧、特にコメの消費を支えて貧困の追放に努めてきました。そして、多くの途上国よりも高い教育レベル、女性の雇用機会の拡大を目指す政策がとられました。五歳未満児死亡率は出生1000あたり19に低下し十五歳以上の識字率は男93、女83%に達しました。

インド

 インドのケララ州では1960年から1985年までに出生率が40%近く低下しました。そして、80年代前半には、インド全体では年間人口増加率が2.5%に近かったのですが、ケララ州では1.8%に下がりました。ケララ州はインドの中でも一人当たりの所得が低いほうに入るので、貧困を背景に人口増加率が高くなるという一般論がいつも当てはまるわけではないことがわかります。

 インド、バングラデシュ、ブータン、ネパールなどでは世界でも例外的に女性の平均寿命が短くインドの統計からは女性の人口が男性より少ないという極めて例外的な状況です。先進国でも途上国でも女性の平均寿命が長いのが普通で、その逆はこれら南アジアの国だけに見られる特異な現象です。また、五歳未満児の死亡率で女児が男児より高いというのも、きわめて特異な状況として知られています。しかし、スリランカ、パキスタン、およびインドでもケララ州だけは特別です。男性の人口を一とした時の女性の割合がインドのほかの州では0.87~0.99であるのに対して、ケララ州は1.03で日本などと変わりません。

このようなことが起こる理由として以下のことが挙げられます。

  • 1950年以来の貧しい人々の運動は小作廃止の土地改革に結実した。これにより、以前は不安定な小作であった多くの人々は生活の安定を手にした。
  • 農業労働者は草の根政治組織を結成しており、その力で農業労働の賃金が比較的高く維持され、老齢年金が保障されている。
  • 民衆の運動によって、インドのほかの州に例を見ない高い公衆衛生予算が獲得された。
  • ケララ州の地位もまた、他の州より高く、実力もある。例えば女性の識字率は全員インドの平均の2.5倍である。
  • ケララ州の乳児死亡率は全国平均の三分の一以下である。そのため、親は子供が無事成人するという安心感を持っている。

 ケララ州の成功をインド全国の状況と比べると人口の安定化をもたらすのは「家族計画」だけに力を入れることではなく、総合的な社会福祉政策を進めることであることがわかります。ケララ州の福祉政策が推し進められたことについては社会主義政権と住民運動の力が大きな役割を果たしました。

キューバ

 社会主義が平等化政策によって生活を安定させる側面については1980年代にカリブ海に二つの国、キューバとドミニカ共和国を比較したデータが示唆的です。この二つの国はどちらも農地の大部分が砂糖やそのほかの輸出作物の生産に向けられています。外資収入は農産物の輸出に依存し、大量の穀物を輸入しています。しかし、ドミニカでは少なくとも人口の四分の三が栄養不足に陥っているのに、キューバの人々は良好な状態にあります。出生率、乳児死亡率、妊産婦死亡率の低さでキューバは非常な好成績を上げています。

 この違いは何なのでしょうか。砂糖の輸出で稼いだ外資が両国で全く異なる方法で管理されていることになります。キューバでは外貨収入は公共のものとなり、教育、住宅、福祉、農業、工業などに使われます。ドミニカでは外貨のほとんどが米国の私企業の利益となり、観光開発などに消費されます。ドミニカでは、土地なし農民が44%、準土地なし農民が48%と途上国の中でも特に土地所有の不平等が大きな国です。しかし、キューバが革命後も砂糖やたばこなどの輸出農作物モノカルチャーを継続したことは失敗でした。砂糖を国際価格より高く買ってくれていたソ連が1991年に崩壊したのちは貿易収支が悪化して生活が苦しくなっています。そこで、ソ連崩壊後は農作物の多様化や有機農業に力を入れるようになりました。なお、年間現在の人口増加率はキューバが0.6%、ドミニカが1.6%です。

 軍事を持たない国として有名な中南米の国コスタリカでは乳児死亡率や妊産婦死亡率が著しく改善され、合計特殊出生率は1965年の6.4から1990年2.4へと急減しました。この国はオスカー・アリアス大統領が1986年度ノーベル平和賞を受賞したことでも知られており、自然保護にも力を入れています。

まとめ

 このようないくつかの事例を踏まえ、そして先にのべたスリランカ、ケララ州などの人口安定化の成功例を総合すると、発展途上国における人口安定化のカギは生活の安定化、女性の地位向上、乳児死亡率の低下であるということがわかってきます。

harukata

「大学では何をするんだろう?」「実際の授業はどんなの?」と思っている方のために大学の授業内容や、現役大学生に向けて、知っておくべき社会の問題などを主に紹介しています!将来に少しでも不安を感じている方の力になれれば幸いです。

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